ichiro
子供の頃、野球選手になるのが夢だった。
当時のヒーローは王さん。
王さんを認識したのは、800号ホームランを打ったあたりだったと思う。
ただ如何せん小生も小さかったので、凄いということはなんとなく分かったが、800号のもつ本当の意味(凄さ)をよくわかっていなかった。
子供にとっては、そんなことより一本足打法でホームランを打つというところに大きな意味があった。
つまり、ただただホームランを打てばいいという話ではなく、あくまで一本足というフォルムありきのホームラン。
それはまるでマンガ(アニメ)の世界が、現実になったような感覚。
そこに小生はグッときた訳です。
しかし、その頃すでに王さんも現役終盤(その二、三年後には現役引退)。
つまり、全盛期を全く観ていない。
その後、王さん級のヒーローは現れず・・・。
その内、小生も興味の対象が野球から音楽へシフト。
野球からしばらく遠ざかっていた。
そこからだいぶ時は経ち、野球界に久しぶりに小生の心を躍らすヒーローが、二名登場。
一人は野茂茂雄。
大胆に体を捻り上げ、一気にボールを放つという見たことのない投げ方(トルネード投法)で、打者をバッタバッタと三振に斬っていく。
それは王さんの一本足打法と同じで、まるでマンガ(アニメ)の世界が、現実に飛び出してきたような感じ。
そして、まだメジャーリーグなんて夢のまた夢であった当時、「無謀だ」と散々叩かれ、中には「あいつのメジャー挑戦は人生最大のマスターベーション」なんてことも言われながら、単身海を渡り、メジャーリーグで大成功を収めていく様は、実に爽快だった。
現在に続く日本人のメジャーリーグ進出は、この人の成功があったからこそ。
そして、もう一人がイチロー。
小生は現在も暇さえあれば、イチローの動画をを鑑賞。
何度観てもうっとりしてしまう。
まるでマンガのような送球・・・。
小生は、この「レーザービーム」に本当に度肝を抜かれた。
実際、アメリカでもこの送球シーンによって、イチローの名が一気に広まったらしい。
もちろん、打者としてはいうまでもない。
イチローが残した前人未到の記録は、しばらくというか、ほぼ永遠に破られることはないのではないか。
また、打席に立った際の一連の動き、そしてバッティングフォームの美しさは、もはや芸術の域に達している。
とにかく走攻守すべてが、ずば抜けている、
体格的なところで言えば、メジャーリーガーに比べて、圧倒的に小さく、線も細い。
そんな選手が、メジャーリーグいや、野球史を完全に塗り替えた。
世界中の誰よりもヒットを打ち、誰よりも鉄壁の守備で、そして、誰よりも華がある。
彼から放たれたレーザービームが、僕の胸を、いや世界中の人の胸を貫いた。
正真正銘のスーパースター。
ちなみに小生にとってのイチロー名場面は、やはり2009年のWBC決勝。
当時、チーム自体の調子は悪くなかったが、イチローはなぜか稀に見る絶不調。
そして、いろんなことがありまして、同じくどん底状態だった当時の小生・・・。
10回表2アウト、ランナー1,3塁の一打逆転の最重要場面に満身創痍のイチロー登場。
「もしここでイチローが打ったら、オレも這い上がれるような気がする・・・」
イチローに自分の運命を託すような気持ちで、祈りながら観ていた。
結果、走者一掃のツーベース。
小生はその時、用事があり秋葉原に来ていて、黒山の人だかりとなっていた家電量販店のTVで、この場面を観ていたのだが、ヒットを打った瞬間、小生には珍しく雄叫びをあげ、周りのおじさん、おばさん、オタクの兄さん、姉さんと順繰りにハイタッチをして廻った・・・。
スポーツでこれほど感動(興奮)したことなんてないんじゃないかというくらい感動したし、また、とても救われたような気分になったのを昨日のことのように覚えている。
そんなイチローにも遂に来るべき時が来た・・・・。
清々しさすら感じる会見。
各記者の質問に対して、真摯に、的確に、且つウィットに、つまり非常にクレバーに回答。
しかも、試合終了直後の非常に疲れているところ、1時間20分も・・・。
こういう会見を見ていると、たまに記者の質問に対して長々話をするが、結局質問の答えになっていない(質問になにも答えていない)ということがある。
頭が悪いというのは一旦置いといて、こういう場合、ある意味丁寧に答えているつもりなのだろうが、実のところ必死にエクスキューズ(言い訳)しているだけなんではないかと思う。
しかし、イチローの回答には無駄がない。
つまり言い訳がない。
それだけに、イチローの一言一言が、とても心に響く。
「人生」とは何か?「極める」とは何か?そして「好き」とは何か?
そんなことを考えさせられる会見だった。
最後、記者団に深々と一礼して、にこやかに去って行くその姿は、“イチロー”というものを全て引き受け、全うした男の清々しさがあった。
イチローのプロ野球人生の全キャリアを観れたこと、つまり同じ時代に生きられたことは、小生の人生に大きな喜び、楽しみをもらったようなもの。
それはとっても幸運なことだと思う。
「偉大な選手に留まらず、母国・日本では、エルビス・プレスリー、ベーブ・ルース、ビル・ゲイツを1人にしたような存在だった。彼は、象徴であり、アイドルであり神話だった」(ニューヨーク・ポスト紙)
- by komedeth